映画についてのよけいな事 

練りきり作りましょう!

師走に観たい作品

12月は日常茶飯事以外に大掃除という”おおしごと”があるので、新幹線に飛び乗って東京まで遠出している暇はない。

にもかかわらず、興味深々な映画が3つもある。

 

希望のかなた

12/2~全国順次公開

製作:アキ・カウリスマキ

監督:アキ・カウリスマキ

脚本:アキ・カウリスマキ

 

eiga.com

フィンランドの名匠、アキ・カウリスマキ監督(60歳)。

前作『ル・アーブルの靴みがき(2012年日本公開、監督、脚本、カウリスマキ)から始まる移民三部作を作る、と言い出したのですが、二作目となる本作で終了し、監督業を引退するそうです。

今までの作品は『浮き雲』(1997年日本公開)、過去のない男(2003年日本公開)、『街のあかり』(2007年日本公開)(全て監督、脚本、カウリスマキ)に代表されるような、無味、無臭、無表情な人々が見せてくれる優しさと哀しさをしみじみ味わう感じのでしたが、『ル・アーブルの靴みがきは今まで常にあった現実の厳しさや哀しさを排除し、おとぎ話のような暖かいお話になってました。今作も人々の優しさ成分が強いようです。今作は観てないので、いい加減なことは言えないと思うのですが、『ル・アーブルの靴みがきは、ちょっと作風が変わったなぁと感じました。

この監督は昔から、”社会の底辺や敗者側にいる人々への暖かいまなざし”から発想されたような作品を作る人ですが、そんな性格には、今の欧州の移民問題の悲劇は黙っていられない物だったという事でしょうか、前作も今作も強く明確なメッセージがダイレクトに表現されてるように思います。(まだ、観てないくせに、書いちゃって、後で困るかもですが)

 

 

『オレの獲物はビンラディン

監督:ラリー・チャールズ

脚本:スコット・ロスマン/ラジーブ・ジョセフ

www.cinematoday.jp

 

 上記シネマトゥディの記事内にある予告を見ていただけると分かりますが、B級の匂いがプンプンします。

この監督さんはとても癖のある作品(=マイナー)を作る人らしく、フイルモグラフティを見ても、観た事も聞いた事も ないものばかりです。

政治色の強いコメディのようですが、面白いのか受け付けないか、私みたいなミーハーには蓋を開けてみないと分からない、というところに妙に引き付けられます。

 

 

『彼女が目覚めるその日まで』

監督:ジェラルド・バレット

脚本:ジェラルド・バレット

製作:A・J・ディックス

   ベス・コノ

   シャーリーズ・セロン

   リンゼイ・マカダム

www.cinematoday.jp

 

抗NMDA受容体自己免疫性脳炎という診断が非常に難しい稀な病気に侵された若いジャーナリストの女性が重い精神病と誤診される不条理や恐怖と闘い、病を克服した実話です。

プロデューサーとして名を連ねてるシャーリーズ・セロン(42歳)が映画化を熱望し、実現にこぎつけたそうですが、米国の映画批評サイト、Rotten Tomatoesのプロ批評家枠では22%という低評価です。一般人の評価も59%と好まれてません。話もキャラクターもつまらない(boring)とか、仕事も恋愛も順調な女性記者の主人公がありきたり(uninteresting)とか書かれてます。

なるほど、奇跡の実話ですよ、とか、恐ろしい病気と闘ったヒロインや深い愛情で支えた家族の話をそのまま描くだけでは、映画としてはつまらない、といわれちゃうんだなぁ。米国人と日本人では、感覚も違うんだろうけど、でも、私も、この病気と同じと定義されてるという卵巣奇形腫による辺縁系脳炎をわずらった女性とフィアンセの感動の実話(『8年越しの花嫁』)を、TVの『感動体験!アンビリバボー』で観た時はびっくらこいたけど、別に映画で観たいとは思わないしな、と思った。

ただ、この病気は病名が分かる前は「悪魔つき」と思われて、患者は悪魔や悪霊のように扱われていた、とか、この病気を治すには安楽死させるべき、と思われていたという悲劇を聞くと、「映画としてはつまらない」という言葉だけで、終わらせてしまってはいけないなと思う。

 

Rotten Tomatoesと言えば 164人のプロ批評家からの評価において100%をもらうというRotten Tomatoes史上最高の評価点をえた『レディ・バード』(12月現在米国公開中、グレタ・ガーヴイグ監督、脚本)の何がそんなに凄いのか? 

高3病の女の子の親との確執、悩みやいろんな心の揺れを描き、最後に少し成長しました、というストーリーのようですが、もう、その時期の気持ちを思い出せない位、老いた私は、いつもなら、何でこんな小さな事で悩んだり、反抗すんの?と冷たく見て、素通りしてしまうのだが、この100%満点てのはどこから?何が?なんだろう、と気になって仕方ありません。

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シアーシャ ・ローナン(23歳)、予告を見ると、ちょっとブスになった感じ(と言っても元が完璧な美少女ですから)がして、それがまた、より、演技がうまくなったような、より人間臭くなったような感じで、今作でも、2016年の『ブルックリン』(2016年日本公開)に続いてアカデミー賞主演女優賞にノミネートされると予想されてます。

人が死ぬ映画が好きで…

〇〇が死ぬ、というネタばれを基に書いてあります。

 

どういうわけか、人が死ぬ映画が好きです。

本来なら、世間様の盛り上がりを横目で見て素通りしそうな(ウソです、ガーディアンズが少しでも出る以上素通りしません)アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018年4月27日日本公開予定)も、その次の続編アベンジャーズ4作目でアイアンマン、キャプテン・アメリカ、ブラック・ウィドウ、ソー等が死ぬかもしれないという噂を聞き、それにつながるストーリーなのか、と思うと、がぜん観たい映画になりました。解禁された予告映像にも、キャップ達が倒れているシーンがありましたしね。予告編、観られた方いますか?サノスの迫力凄かったですね!

 

 

人が死ぬ映画が好きな理由①

映画とかドラマって一般的には視聴者には起こりえないような話を観せてくれる物。そのせいで、誰かが死ぬような展開も起こる。起きて当たり前。そこで、ハッピーエンドにするために、死ぬはずの人が死なないとリアリティがなくて興ざめしてしまい、感動したいのに感動できない……

米国ドラマ『ER』ファーストシーズンの第一話を観た時から私は夢中になりました。それまでの日本のTVドラマでは、病院が舞台のドラマで、病人や怪我人がうじゃうじゃ出てくるのにそういう人達が誰も死なない、主人公が難病の少女なのに最終回には何故か治って元気になっちゃってる、みたいのが定番だったように思いますが、『ER』はそんなウソは描きません。事故でER診療室に運ばれた重傷患者は医師達の懸命な治療にもかかわらず、サクサク死にます。

その死を見届けた医師達もいつまでも感傷に浸ってるわけにはいかず、割り切って治療を待っている次の患者の元へいきます。これこそ病院(生と死の瀬戸際の場所)のリアルじゃないですか?

そんな残酷なリアルを描いてるにもかかわらず(そのリアルが根底にあるからこそ)その現場で悩み、奮闘する人間臭さプンプンの医師や看護師達、そして命の瀬戸際に立たされた患者達の姿に本物のヒューマニズムを感じ、感動するのです。

『ER』が日本で放映された後、やっと、今までの患者がみんな助かる病院ドラマからの脱却をした『救命病棟24時』(1999年 フジテレビ制作)が作られました。(でも、リアリズムは『ER』に比べれば甘々ですが)

『ER』の原作、製作総指揮はあのマイケル・クライトン(2008年に66歳で没)です。ファーストシーズンの第3話までの脚本も彼で、「人間は自然には勝てない」という重いメッセージを内包しながら、大ヒット人気作品になった『ジュラシック・パーク』(1993年公開)の作風がこのドラマにも重なる気がします。

『ER』は、2009年に(日本放映では2011年)第15シーズンをもって終了しましたが、今でも私の生涯のベストofベストです。

ちなみに、二番目に好きな海外ドラマは『ER』のスタッフ達が作っている米国ドラマの『シェイムレス』(2011年~)ですが、日本ではまるで人気がないようで、DVDも発売されてません。

 

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人が死ぬ映画が好きな理由②

人の死に方にはその人の価値観や人生観が現れると思うから。

大切な人の為に死ぬとか、自分を犠牲にしても誰かを守りたい、とか。

私は溺れている人を助けに川に飛び込む、とか、線路の中で動かず、自殺しようとしてる人を連れ戻しに行って一緒に電車にひかれる、等の尊い行為は死んでもできない、多分、年老いた親や旦那の為にさえ死ねないと思う。そんな情けない人間だけれど、子どもの為なら死ねると思う。子どもの幸せの為に死ぬような事があったら、幸せだ、とさえ思う。だからガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.2』で、自分の息子(血のつながりなんて無意味な実質的親子)を助ける為に死んだヨンドゥには共感だけでなく憧れすら感じる。 

 

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そして、ヨンドゥよりも更に自分と重ねて共感してしまうのが、

グラン・トリノ

の主人公、コワルスキーです。

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2009年日本公開

監督:クリント・イーストウッド

脚本:ニック・シェンク

 

 

 

グラン・トリノあらすじ

 (完全ネタばれ) 

 

フォードの自動車工を50年勤めあげたコワルスキー は妻を亡くし、頑固さゆえに息子達にも嫌われ、人との交流は数少ない友人とのつき合いだけ、自宅ポーチにアメリカ国旗を掲げ、愛車グラン・トリノを心の糧にデトロイトで孤独な隠居生活を送っていた。

燐家のモン族(ラオスの山岳民族の移民)の若者タオが、同郷のギャングにそそのかされコワルスキーの愛車を狙って忍び込んだところを銃で追い払ったのをきっかけに、タオや姉スーをギャング達から救ってやり、彼らから家族のような接待を受け、心を通わせ始める。スーからタオを一人前の男にするように頼まれ、彼に深くかかわる事になった為、タオやスーを家族同然に大切に感じるようになるが、病に侵され生い先が長くないことを知る。タオ達をトラブルに巻き込んでいるギャングをコワルスキーが懲らしめた事が発端になり、タオや姉スーがギャング達に壮絶な報復をされる。

復讐に燃えるタオを家に閉じ込め、コワルスキーは単身、ギャング達の住み家に乗り込と、わざと近隣の住民が自分とギャングのやり取りを見物する状況を作り、ギャングをあおって、自分を射殺させる。目撃者の証言で無防備の人間を撃った重罪を言い渡されるギャング達は長い刑期に服する事になり、タオはギャングとのトラブルから解消され健全な未来を手に入れる。

コワルスキーの遺書には愛車グラン・トリノをタオに譲ると記してあった。

 

 この作品を最初に観た時は私は彼とは違ってました。でも、今は、まだ夫婦揃っているし、知り合いや友人もコワルスキーよりはいても、故郷をでてった息子とは、要件連絡以外のメール、電話をしないので、半年位、音信なしが当たり前、子どもとほぼ絶縁状態な環境はコワルスキーと同じで(これが娘だったら違うんでしょうね)彼の淋しさとか絶望を痛い程わかってしまうようになりました。

血のつながりはない、でも自分を肉親のように慕い、頼ってくれる若者の為なら長くない命をくれてやってもいいと思う気持ち、分かる。誰よりも分かる!と思ってしまう。

世界で一番大切な人のために死ぬ……こんな死に方いいなあ……と。

(でも、射殺されるのは怖いな)

 

ミリオンダラー・ベイビー

2005年日本公開

監督:クリント・イーストウッド

脚本:ポール・ハギス

 

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 も尊厳死とそれにかかわる人々を描いていて登場人物の価値観が試されている。

フランキーは人工呼吸器で呼吸し、首から下を動かせずに生きながらえなければならない絶望より死を望むマギーの願いを聞き、彼女を安楽死させる。だって、娘同然の大切な大切なマギーが、自分で舌をかんでまで死にたがってるんだもの。

このマギーの誇り高い生き方にまず、泣きます。マギーは言います。

 「あたしは生きた、思い通りに。その誇りを奪わないで。

 今の望みはそれだけ」

次に彼女のその願いをかなえてあげるフランキーの愛情の深さに泣きます。そして息を引き取る直前、マギーが、ボクシングの試合に着る自分のガウンの背中にフランキーが付けた"モ・クシュラ”という言葉の意味を教えてもらった瞬間、更に泣かされます。「愛する人よ、お前は私の血」それを聞いてマギーは旅立ちます。

フランキーとマギー、お互い肉親に見放された二人。その血のつながらない二人の絆の強さ。フランキーの行為にはカトリック団体や尊厳死に反対する人々から抗議があったそうだけど、フランキー自身も敬虔なカトリックなのである。本当に愛してるという事は、その人が心から望む事をしてあげる事ではないだろうか、たとえ死でも。

安楽死は大罪です」とか「すべては神に任せなさい」みたいなきれい事しか言わない、マギーとは赤の他人の神父とフランキーとの対比が鮮やかだった。

グラン・トリノ』と『ミリオンダラー・ベイビー』は、

「本当に人を愛するとはこういう事だ」という事を描いていると私は思っている。

この世で死ぬ事ほど辛い事はないと思う。だけど、その最高に辛い事「死」を描いた作品を観ると、人生の真実とか、人間の尊さ、偉さを教えてもらえる気がする。

だから、死ぬ話、そして人の死を丁寧に扱っている映画が好きだ。

 

 

 ★おまけ★

 前回の記事で、田舎暮らしの愚痴をさんざん書いてしまい、ちょっと反省しました。

田舎に住んでると、こんないい事もあります。

通勤途中に毎日こんな景色が見れます。

 

 

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日米田舎者の悲哀 『ローガン・ラッキー』

 『ローガン・ラッキー』のネタばれあり

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監督:スティーブン・ソダーバーグ

脚本:レベッカ・ブラント

    (実はソダーバーグ本人、又は彼の妻の

    脚本という噂あり)

映画界から引退したはずだったソダーバーグ監督(54歳)が、脚本を読んで、その素晴らしさに魅了され、監督復帰した作品。

ソダーバーグ監督、この作品が東京国際映画祭で特別招待作品になったため、来日、その舞台挨拶の時、報道陣向けの写真撮影で、カメラマンから笑顔をリクエストされると「No!」と即答したそうだ。

私はセックスと嘘とビデオテープ(1989年日本公開)も良かった、そして、

アウト・オブ・サイト(1998年日本公開)やエリン・ブロコビッチ(2000年日本公開)、トラフィック(2001年日本公開)を観て、いい映画をみたなぁ…この監督のセンス、好きだな…と思いましたが、彼の作品全部は観てないので、ファンではないんだと思います。でも、こういう話を聞くと、この人、好きだなぁ!!と思います。 

  

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この状況下でも愛想笑いはしない

 

 映画を撮るのをやめたのは、自分の作った作品が、拡大公開されると配給や収入配分の流れ等が自分が知らない、コントロールできない状態になるのが、嫌だったからだ、そうです。

何故、自分でコントロールできないと嫌なのか、要は、大作になると、出資する金持ちや配給会社から色々口出しされて、本当にやりたい自分のやり方で映画を作り、配給できないからって事ですかね?

故に今作からは配給も宣伝方法も、全て自分で管理する映画製作にシフトし、これからもAmazonと協力して個人商店型で作品作りしてくれるそうです。

今作はそんな彼のこだわりで、余計な宣伝費をかけなかった為か、大ヒットとはいかず、製作費回収ギリギリの線の興収だったそうですが、ロッテントマトのトマトメーター(米国批評サイトのプロ批評家枠)で93点という高評価ですし、彼のファンも、私も、そして大勢の人を幸せな気持ちにしてくれる映画を観せてくれて、文句なしです。 

マーケティングはどうやって行われるのか、製作物はどのようなものが作られていくのか、そして資金がいつ、どのような形で使われるのかということを自分自身が確認できるかどうか。どういった風にさまざまな収益が集められて、関わった人々に配分されていくのか、自分できっちりと管理して透明性をもって見られること。実は、これらができなくなったのが、長編映画から身を引いた理由でもあったんだ。自分の作品が拡大公開されてしまうと、どうしてもコントロールできなくなってしまうからね。

 、当時はそれしかないという苦渋の思いで行ったことなんだ。映画のことは今も昔も愛しているよ」。当時を述懐したソダーバーグ監督は、「でも、今はハッピーだよ」と満面の笑みを浮かべる。「自分の条件で戻ってくることができたし、ほかの人のビジネスコンセプトに合わせなくてもよく、自分ならではのやり方で仕事できているから、とても快適なんだ」。

ソダーバーグ監督は今回、新たな試みとして、米国内の配給を行う会社フィンガープリント・リリーシングを設立。これにより、企画から公開に至るまでのすべての行程を掌握し、監督が志す“コントロール”が可能になった。「今回はAmazonに劇場面の権利を買ってもらい、そこで得た利益をマーケティングに回しているんだ。契約を金融機関に持っていってローンを組み、本作を作ったんだよ。Amazonは今までであれば全権を買うというのが通例だったから、今回のように部分的に買って、支払ったものが別の用途に使われるという試みをまとめるのに時間はかかったね。ただ、Amazonから“今後の作品も同じ形態でやろう”と言ってもらえたから、彼らにとっても悪い契約ではなかったと自負している」と総括したソダーバーグ監督は、新たなチャレンジに手ごたえを得た様子。

 出典:映画.com

【ソダーバーグ監督インタビュー:後編】「ローガン・ラッキー」のために新会社まで

設立!? : 映画ニュース - 映画.com

 

あらすじ:以下を参照ください

 

eiga.com

 

 感想

ノースカロライナ州の田舎が舞台です。

FBI捜査官以外、出てくる人みんな田舎もんです。

主人公ジミー(チャニング・テイタム)の元妻の現夫も、事業に成功し、他所にあたらしく店を構える余裕がある裕福なビジネスマンですが、スーツをびしっと着たリッチマンではなく、帽子をかぶり、ビール腹にポロシャツ姿の"アメリカの田舎のおっさん"です。

ジミーの娘がコンテストで歌う『カントリーロード』(ジョン・デンバーとかオリビア・ニュートン・ジョンが歌ってるあれです)に感動したとか、ほろり、としたというレビューをよく見たので、何で日本人があれを聞いて泣くんだろう?と不思議でしたが、作品中で、日本語訳された歌詞を見たら、『カントリーロード』には、故郷への郷愁と共に哀愁も漂ってるんですね。

美少女コンテストで、ジミーの娘が、「パパの好きな歌を歌います」と言って、アカペラで、『カントリーロード』を歌いだすと、会場の人々も思わず、歌いだし、みんなで合唱してるような状態になるんですが、その場面からは、故郷への郷愁、賛美よりも、この田舎で全うする自分達の人生の切なさをみんなが歌にしてる、という感じを受け、田舎に住んで、色々あきらめて生きている自分を重ねてしまい、私はそれで泣きました。

近年、米国の富の二極化の浸透で、持たざる側にいる田舎の白人達。その低所得の階層の気持ちを代弁したような作品でもあるので、東京等の大都会と自分達の便利格差にため息つく田舎ものの私は、なんか無性に共感してしまいました。

例えば、観たい映画を1本観る為に(自分が観たい映画はほとんど地元では上映されていない)新幹線で、一万円もかけ、時間も一日かかるので、観るのをあきらめる。

タイ料理のお店もベトナム料理店もキッシュを売っているベーカリーもありません。

洋服店はユニクロとライトオンとしまむらイオンモールと代々続く呉服屋がやってるほぼつぶれてる総合衣料店だけ。

もちろん、引きかえに、都会より便利なこともあります。

保育園や認定こども園の待機児童数はほぼ0です。

なにせ、若い夫婦や子どもが少ないんですから。

自然も多いし、職場はもちろん、どこへ行くのも車なので、バスや電車の中で、子どもが泣き止まなくて、周囲から白い目で見られるなんて事もありません。

仕事だって、おしゃれな職種にこだわらなければ、いくらでもあります。慢性的な人不足ですから。

そんな子育てに最適な土地。にもかかわらず、移住してくる若い家族はあまりいません。

個人商店もどんどんつぶれて、商店街はシャッターだらけ。郊外には広大な山や林、畑や空地がありますが、人がいないので、荒れていく一方です。そんな景色を見て、子ども達は大学進学を機に故郷を出ていきます。夢や、やりたい事は地元ではかなえられないそうです。そして一度、出ていくともう帰ってこないので、親達はあきらめて、老夫婦ふたりの淋しい老後を受け入れます。

物欲をあきらめるのは、慣れれば大した事ないですが、この精神的な幸せまであきらめなければならないのはとても切ないです。

そんなに嫌なら、都会に越せば?と言われれば、それまでですが、そんな大それたことなんてできない、ふがいないダメ人間です。

そんなひがみ根性がしみついたダメ人間だからだと思います、ストーリーも、登場人物も舞台も、全てがおしゃれでイケメンな『オーシャンズ』シリーズを観る気がしないのは。

というわけで、本作の主人公、ジミーとクライド兄弟の挫折感や悲哀、二人が組むバング兄弟(次男、三男)の間抜けさ、最もプロらしい頼りになりそうなジョー・バング(長男)さえ、どこか抜けてるように見えるゆるさ。

そういう反オーシャンズ的なものが愛しくてたまりません。

そして、ゆるい人達はどこまでもゆるく、憎めなく、できるヤツなFBI女性捜査官や勝ち組の爽やか女性医師はどこまでも鋭く、かっこよく…緩急の効いた上手い演出で、出演時間の少ない二人の女優、ヒラリー・スワンク(43歳)も、キャサリン・ウォーターストーン(37歳)も非常に存在感があります。

楽しくて、観終わった後、又観たい、と思ってしまう作品です。

ただ、セリフで多くを語らず、画で見せる、という洗練された脚本なので、話の展開が、巧妙すぎて、金庫泥棒の作戦の細かい所の意味が1回観ただけでは分からない事がありました。もし、読んでくださってる方で、私と同じ印象を受けた方がいたら、 

かるびさんというブロガーさんのHatena blog『あいむあらいぶ』の 

【ネタバレ有】映画「ローガンラッキー」感想・レビューと10の疑問点を徹底解説!/祝!スティーブン・ソダーバーグ監督復帰第一作!

blog.imalive7799.com

 

を読むと、疑問点が青空が広がるようにすっきりします。

 かるびさん、とても助かりました。緻密な観察力、リサーチ力、そして洞察力に脱帽です。ありがとうございました。

 

☆今年は、ザ・コンサルタント

     『ジーサンズ』

     『ローガン・ラッキー

 と、犯罪映画なのに、観終わった後、あったかくなる作品が豊作だった気がします。(3本ですが)

不運や貧乏で苦労する庶民を描く時、米国は義賊に変身させて、明るく描きますが、英国は『わたしは、ダニエル・ブレイク』(2017年日本公開)とか、『おみおくりの作法』(2015年日本公開)とか、容赦ないリアリティで描ききって、何も解決はしない、という作風が多い気がします。国民性と関係があるんでしょうか?

イギリス産で、虐げられた人達が、反撃するクライムコメディって何かありますか?

 

 

 

 

適材適所の大切さ 『ザ・コンサルタント』

 


『ザ・コンサルタント』予告編

 

ネタばれあり

予告では隠してますが、

この作品はただのカッコイイ

殺し屋の話ではありません。

その理由をばらして感想書いてます。

 

 

 

 

 

あらすじ

高機能自閉症のクリスチャン・ウルフ

ベン・アフレック)はその天才的数学能力

を生かし、会計士として自立し、

社会で居場所を確保して生きているが、

裏稼業では犯罪者達の汚れた金の資金洗浄経理

を請け負い、莫大な報酬を得ている。

危ない連中と仕事するため、身を守る為に射撃の腕

や格闘技の腕も一流である。

財務省の分析官、メリーベス・メディナは裏社会で

”会計士”と呼ばれる謎の男(クリスチャン)の

素性を突き止めるよう、財務局長のキングに命じられる。

一方、普通の会計士として雇われた会社で、経理の不正の

原因を一晩で発見したクリスチャンは命を狙われる大事件

に巻き込まれ、彼を抹殺しようとする組織との死闘が始まる。

 

監督:ギャヴィン・オコナー

脚本:ビル・ドウビューク    

 

 

 

 感想

   ☆良かったところ

1.ベン・アフレック(45歳)がやーっと適材適所に使われた事。

今まで、無表情で、大味で、大根だよね、この人。とばかにしちゃってました、ごめんなさい。それが、自分の個性にあう役(自閉症で表情が乏しい)をやるとこんなに魅力的になっちゃうんだ、とびっくり!

サイボーグのような顔で、愛想笑いもしない、冗談も言わない、分からない。その彼が、自分と似た人や自分を分かってくれる人と触れ合った時に見せる嬉しそうな表情に、おばさんは撃ち抜かれてしまいました。

かばってあげたい、あーだこーだと世話してあげたい(そういう事されるの、嫌だろうけど)……そんな魅力的な主人公でした。

 

2.応援したくなる不器用な登場人物達。

主人公のクリスチャンをはじめ、クリスチャンと共に命を狙われる経理課の女性社員、ディナ・カミングス(どこか不器用で生きるのに苦労してる感じ)、暗い過去を隠し持つ財務省分析官のメリーベス・メディナ、エリートコースは外れたが、父親としての生き方は正しかった(と本人が言っている)財務局のキングなどなど、他にもクリスチャンの秘書の女性とか、登場人物に向ける目線の優しさ……アクション映画なのに。

主人公や仲間を応援したくなる気持ち。『GotG』に似ている。

ポロックの絵が重要なアイテムとして出てくるのも『GotG』のコアなファンには嬉しい) 

     

3.既成概念をひっくり返した父親の愛

この作品には主人公の他にも色々なタイプの自閉症の人がでてきますが、自閉症の特性を理解して下さい、というような道徳的意図はないと思います。むしろ逆で、クリスチャンの父親は自閉症児の特性に配慮した特別扱いを拒絶します。なぜならいったん世間に出れば、そういう配慮をしてくれる人ばかりではなく、むしろ配慮してくれない人の方が多いからです。

社会で自立して普通に生きていく為に、父は、クリスチャン自身が、そのやっかいな特性と戦い、彼を異質、怪物と恐れる世間の人々とも戦い、倒していく生き方を教えます。

この父親の逆転的発想はとても衝撃的でした。

私は保育士免許を取ったり、学童保育で働くなど、児童福祉の現場に何年かいたのですが、自閉症児をはじめ、発達障害児に対してのガイドラインは、"人と違うので、特別扱いをしてあげないといけない(悪意のある言い方をすると)、彼らが、安心して過ごせるように特別に配慮しないといけない" というものでした。今もそうだと思います。

私自身もその指導方法を全く疑問に思いませんでした。だって、発達障害の子どもに、いつもみんなと同じように行動しなさい、なんて、死ぬほど嫌で我慢できない事を強いるなんて、ひどい、かわいそうです、単純に考えたら。でも、本人の一生の事まで考えたら、福祉的ケアに頼らず、社会で自立して生きていく為には特別扱いのない環境で仕事し、暮らしていけるように訓練してあげる方が正しいのかもしれません。

初めは、この父親は、自分の子どもが自閉症だと認めたくなくて、普通になるようスパルタ訓練してるのかと思いましたが、スパルタ訓練したのは愛情からだったと分かります。クリスチャンが、大きな刺激を受け、錯乱して暴力ざたをおこしてしまい、警官から銃を向けられた時、父親が盾になり撃たれます。クリスチャンを守ったのです。

 

 

  ☆残念だったところ

クリスチャンは逃避行中に、好意を持ってるディナが気に入るようなホテルをとったり、別れる時に、ディナを褒める言葉を残していったり、人を思いやれる機能は、非自閉症者とほぼ変わらない気がする。そこはやっぱ作り物の世界だな…と。

クリスチャンのディナに対する愛情表現がもっと不器用だったら、リアリティが増してもっと深みのある作品になったと思う。

 

現実には自閉症者がクリスチャンのように一人で自活できる程度のコミニュケーション能力を取得できるかどうか、素人の私には分からない。でも、能力をそれに合った場所で生かせれば、クリスチャンのように生きられるかもしれない、そうならいいな、と明るい気持ちにしてくれる映画でした。

自閉症=人と違う=劣っている ではない」

というメッセージをこんなに鮮やかに表現したスタッフ(特に脚本)、頭がさがります

 

クリスチャンと係わるハーバー神経科の所長(自閉症児の生活施設のような所)は言います。

「彼らは高い能力があるのに伝えるすべを知らないだけかも。あるいは我々が聞く力を持たないだけかも」

ベン・アフレックの無表情という個性を、俳優として"劣っている"と決めつけてた自分も、自閉症を正しくとらえてない世間と同じだったのかもしれない、と思いました。

 

    

マーベルの繁栄を支える天才 ケヴィン・ファイギ 

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  左からクリヘム夫妻

  ケヴィン・ファイギ社長

  タイカ・ワイティティ監督 

 

冒頭から早々と『マイティ・ソー バトルロイヤル』のネタばれあります。

 

 

 

 

 

 

マイティ・ソー バトルロイヤル』で、不思議だった事。

①ロキは惑星サカールに暫く住んでいた設定でしたよね。そしてグランドマスターと並んで格闘大会を見学できるほどの仲でした。

だから、格闘大会でチャンピオンのハルクを何度も見てるはずなのに、ソーの対戦相手としてハルクが現れた時、何故初めて見たような顔をして、おびえながら、「逃げないと」みたいな事を言ったのでしょう?

②ソーは雷神で雷を操れるほどの存在なのに、何故、人間レベルの電気ショックで動けなくなっちゃうのでしょうか? 

③ソーにアスガルドの王位を捨てさせた運命の女性、ジェーンとのその後については「ふられた」又は「別れた」だけで、終わりですか?他の場面にジェーンとのいきさつについて言及してたとこありました?

 

私が見逃したかもしれないのですが……

 

日米同時公開のマーベル映画マイティ・ソー バトルロイヤル』が映画批評サイト、ロッテントマトのプロ批評家枠で、93点というマーベル作品では歴代2位となる高得点をたたき出し、週末興行収入、$121,005、000、 ボックスオフィス1位スタートを飾りました。

軽くてコメディ調になったのが、好評ですが、今回も少数派の私は前2作の重厚な雰囲気がソーの個性だと思ってるので、マイティ・ソーの威厳があって、でも明るいソーやマイティ・ソー ダークワールド』の、ロングヘアのたてがみ姿からセクシーフェロモンがだだもれしてたソーのほうが良かったなあ…と思っちゃいました。

(ただしロキとハルクはこっちの路線に異議なし)

 

 

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こっちのほうが似合ってたと思うけどなぁ……

 

マイティ・ソー バトルロイヤル』でのタイカ・ワイティティ監督の起用はアベンジャーズ3作目の『インフィニティ・ウォー』や4作目で、今までのトーンのソー達だとガーディアンズと絡んだ時に画面が水と油みたいになっちゃうから、キャラを変えてガーディアンズに寄せた、という説と

ソーの前2作が、他のマーベル作品に比べて人気、評価共に低いので、テコ入れを目的としてコメディが得意な人に作らせたんではないか、という憶測の二つがあるけれど、

どちらにせよ、マーベルの、稼げる映画を作るセンス、その正確さに脱帽です。

でも、これは同じマーベルスタジオの『GOTG』ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー)の成功がいかに影響力が大きかったか、の表れだと思うので、われらがジェームズ・ガン監督のお手柄でもあるじゃないですか。

今のマーベルスタジオは何をやっても成功してしまいますね。

この大ヒットで『アイアンマン』からのマーベル映画の米国でのトータル収入が5,000億円強、全世界では1兆円強だそうです。

そのマーベル王国の繁栄を支えているのが

 ケヴィン・ファイギ(44歳)

映画プロデューサーにしてマーベルスタジオの社長

南カリフォルニア大学 映画芸術学部卒

2008年の『アイアンマン』でマーベル作品を初プロデュース。 

www.cinematoday.jp

 

ファイギ氏は

「 ユニークなビジョン、クリエイティブな声をもっている監督を探すようにしている。何か僕たちに感銘を与えるような、賢いものを作った人を。僕たちにとっては、それがテレビドラマや小規模な映画だったとしても関係ない」と断言する。

引用:シネマトゥデイ

 

これぞ、今のマーベルの黄金律ですよね。

大勢いる部下のプロデューサー達を動員していろんな映画祭の作品やインディペンデンス映画をかたっぱしから観てるんだろうな……そして、自らの感性で判断した才能にチャンスを与える為、まず取り掛かる作品の企画会議に当人を呼ぶみたいです。そして次の会議、その次の会議と続け、呼ばれた人達は自分のアイデアや構想を資料にして提出し、それがおメガネにかなうと企画中の作品の監督に決まるみたいです。ジョン・ワッツ監督(スパイダーマン ホームカミング』2017年日本公開)やジェームズ・ガン監督のインタビューより仕入れた話です。多分、シナリオライターも同じ方法で選ばれるんではないでしょうか。

このようなマーベルの超実力主義なシステムも見事ですが、

ケヴィン・ファイギ社長の

一歩先を行くセンスがまた凄いんですよね。

以下、その例です。

 

キャプテン・アメリカ

シビルウォー

(2016年日本公開)
『ウインターソルジャー』

(2014年日本公開)

  の監督のジョーアンソニー・ルッソ兄弟を、ケヴィン氏が見つけて採用するきっかけになったのが、二人が監督してたTVドラマ『コミコン』(2009年~)のファーストシーズンだそうですが、これ、本当にコメディofコメディで、しかも、ナンセンスで、皮肉たっぷりで、小ネタ満載で、ちょっと『GOTG』方面なんですね。それは脚本家のダン・ハーモンの個性で、なんだとは思います。
が、ウイットに富んだセリフはあっても、ふざけたチャラい所がひとつもない『ウインターソルジャー』『シビルウォー、2つの作品の監督を、このコメディを見て選んだってどういうセンスしてるんだろう……という……

ただ、ルッソ兄弟が脚本も書いた過去作『ウェルカム トゥ コリンウッド』(2003年日本公開)も、間抜けな人たちが織りなすコメディ寄りの作品なので、ケヴィン氏はどうもコメディが好きで、その嗅覚が、他作品含めこの2作品における斬新な人事につながってるようにも思います。

 

『GOTG』以来、

マーベル以外の映画でも大流行りの、戦闘シーンにオールディーズの曲を流す手法ですが、『GOTG』の企画会議の時、ジェームズ・ガン監督が、出した企画書の表紙に載せられていた古いウォークマンの写真を見ただけで、すでに、

「信じがたいほどパーフェクトだ」と思った。

とインタビューにあります。

引用:Hatena Blog Koto-Koto 

          BuzzFeed  「マーベルを落としたmaniac」

 

『GOTG』シリーズの主役、

一応ヒーローのスター・ロード役に、ジェームズ・ガン監督が、まだデブだったクリス・プラットを選んだ時、ケヴィン氏はクリスがデブのままでスターロードを演じる事を許したそうです。マーベル初のデブのヒーロー映画という遊び心を面白がったのでしょうか?

この企画は、クリス本人が、常識的判断からダイエットしたため、実現しませんでした。実現しなくて良かったと思います。クリスがデブのままヒーローをやってたら、一部の人達には大ウケしたかもしれませんが、誰にも好かれる大ヒット作にはならなかったと思います。

そういう点で、ケヴィン氏は運もいいのですね。

 

ケヴィン氏か部下のプロデューサー の采配か

分からないけど凄い事

 

シビルウォー

セカンドユニット(メインのカメラが撮ってる場面を同時に別の角度から撮る班のこと)の監督はアクション好き映画ファンが一押しのデビット・リーチ監督とチャド・スタエルスキ監督(『ジョン・ウイック』シリーズ)だそうです。

言われてみるとあの何人ものヒーロー達が敵味方に分かれて、重複して戦ってるアクションシーン、とても観やすかったです。

 

スパイダーマン ホームカミング』(2017年日本公開)の

ジョン・ワッツ監督(36歳)が見つけ出された作品

『COP CAR / コップカー』(2016年日本公開)は

登場人物のいたずらっ子の男の子達も、通りすがりのおばさんも、悪人達もみな、普通の男の子、普通のおばさん、普通の悪人なのですが、次々起こる事が予想外&リアル過ぎて怖ーいのです。

主人公のピーターはじめ、登場人物がみんな普通で(ロケットやロキが好きな私にとっては)あの万人受けする系のスパイダーマン作品を任せる監督を選ぶのに、この静かだけど怖ーい作品を作った人を候補に入れるんですから……斬新すぎてついていけない。 

 

ケヴイン・ベーコン(もう59歳!)はあげマンですね!

ジェームズ・ガン監督が、『GOTG』の前に撮った『スーパー!』にも、『COPCAR/コップカー』にもでてますもんね。彼を使って作品を撮ると、出世して、大作映画を作れるようになる、なんてジンクスもできそうです。

 

ケヴィン・ファイギ氏もマーベルスタジオのプロデューサー達も、何て幸せな人生なんだろう、と思います。好きな仕事で才能をいかんなく発揮できて。

ただ、人間は、必ず負ける時が来る、と言いますから、この繁栄にかげりが見える時は必ず来ると思います。

コミック原作のヒーロー映画やTVドラマは米国文化に深く根づいてるようなので、少なくとも米国ではこの先もずっとヒーロー映画の需要はなくならないのかもしれません。でも、今のような連戦連勝状態が5年後、10年後も続くとは限らないでしょう。その時に、プランBエンターテインメントのような興行成績は重要視しない、自分達が良いと思った物を作る、という信念があるかどうか、映画製作者としての質が問われるのではないでしょうか?

 

マーベル映画の近々のラインナップとしては

2018年3月公開のブラックパンサーライアン・クーグラー監督)、

そして、何といっても

2018年4月27日に日本で米国より早く公開される予定の

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は『ウインターソルジャー』シビルウォーでキレのある脚本を書き、マイティ・ソー ダークワールド』でもウイットに富んだセリフが上手だった脚本家、クリストファー・マルクス、スティーブン・マクフィーリーとルッソ兄弟との名コンビの期待作なので、一部のマーベル作品しか観てない私も非常に楽しみです。

 

読んでくださった方、ありがとうございました。

マーベル作品に詳しくないので、もし、間違った記述をしてたら、教えていただけると助かります。

 

 

吹き替えの良さ、字幕の良さ NO.3

吹き替えがいい人も、字幕で観たい人も、別に自分が好きな方法で観てればいいわけで、よく、ネット上で吹き替えのキャスティングにいちゃもんつけると、「吹き替えが嫌なら、観なけりゃいい」とコメントされて、いちゃもんつけた人が沈黙して終わりってなるんですが、でも世の中はそんなにシンプルではなくて、吹き替えでしか観れない場合もあります。

 

  • 友人や家族と一緒に観に行く時、吹き替えを要望されて。
  • TV放映された娯楽作品を家族と一緒に楽しみたい時。
  • 田舎のシネマコンプレックスだと、公開後1週間たつと吹き替えのみになってしまい、『ワンダーウーマン』を泣く泣く吹き替えで観ました。
  • 飛行機内で上映される洋画も吹き替えしかない作品があり、吹き替えで観たら、アニメに出てくる10代の男の子みたいな軽くて高い声で、特にかっこいいとは思わなかった男優さんを1年後に字幕で観たら、声や喋り方が男の渋さやセクシーさをきわだたせていて撃ち落とされてしまった。この人の魅力を1年も知らずにいたなんて、何てもったいない、と思った。

 

 言ってもしょうがないけど言わずにいられない事

私は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』2作が大好きで、それは主役のスター・ロードが定型通りの頼りがいのあるヒーローではなくて、ちょっと頼りなくて、子どもっぽくて、下半身のだらしない、とても新鮮なキャラクターだから、というのが大きくて、クリス・プラットがその、ちょっと頼りない二枚目半を、高めの声のちょっと舌ったらずな喋り方で見事に表現してるのですが、山寺宏一さん(56歳)が吹き替えしてるのを観ると、声だけすごーく大人で、滑舌もすんごく良くて、頭もすごいキレて落ち着いた感じの頼りがいの塊みたいなおじさんになっちゃってるんですね。

頼りないからこその魅力が消されちゃっているんです。

後、この作品はオフビートコメディ系なので、冗談言う時も、クリスは淡々とした顔でいきなりずばっと面白い事を言うんです、その間が面白さをつくるんですけど、山寺さんのしゃべり方はオーバーアクションぎみで、「今から面白い事いいますよー!」って雰囲気から冗談が出てくるので、面白さが半減しちゃうんです。

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 同じマーベル映画のヒーロー、キャプテン・アメリカは、逆に骨太でストイックで大人なイメージの役で、演じてるクリス・エバンス(36歳)も重みのある野太い声なんですが、吹き替えの中村悠一さん(37歳)だと、アニメのヒーローみたいな若くて軽い感じの声と喋り方で、こちらも、反対のイメージの吹き替えになっていて、違和感たっぷりなんです。

この若くて軽い方をスター・ロードに、大人すぎる山寺さんをこっちのキャプテン・アメリカにしてくれれば、よっぽど、合ってるのに…と思います。

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私は映画の魅力って、登場人物たちの魅力がかなり重要だと思うんです。

そして人の魅力って声もしゃべり方も含めてだと思うんです。

プロの声優さん、実績のある声優さんを使っても、その役のキャラに合ってなければ、その役の魅力が台無しになってしまうと思うんです。

話題作りで、芸能人をキャスティングする以外の時って、どのような経緯で吹き替えキャストを決めるのか知りませんが、業績や知名度でなく、元の俳優さんの固定されたイメージだけで選ぶのでなく、その役のキャラに合った喋りができるどうかを重要視して選んで欲しい。

 

 以上、こだわらない人にとっては全然気にならない話でした。

もし、山寺さんのスター・ロードが大好き!という方やキャプテン・アメリカの吹き替え最高!と思ってる方がここを覗いてしまったら……ごめんなさい。

このブログの認知度からするとその確率は限りなく低いのですが、

もしも、もしもこの記事を読んで不快になった、とか、全く反対意見だ!という方はコメント欄にじゃんじゃん反論や苦情を書いて下さい。

コメントをもらうのが夢なので大喜びしちゃいます。

 

 

吹き替えの良さ、字幕の良さ NO.2

名吹き替えだと思う作品BEST5

   ※個人的意見です

 

1『トイ・ストーリー』シリーズ

 (1996年1作目日本公開 2010年3作目日本公開)    

 

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  ウッディ       

  唐沢寿明

 (英語版はトム・ハンクス

 

  バズ・ライトイヤー  

  所ジョージ

 (〃 ティム・アレン

 

これは、もう、奇跡の名作だと思います。こんな私でも、『トイ・ストーリー』を字幕と吹き替え、どっちで観たい?って聞かれたら、10回中、10回吹き替えを選びますもん。世間的にも、この二人のあのはまりように文句をつける人はいないんじゃないでしょうか。

最初、ウッディを山寺宏一さん、バズを玄田哲章さんで吹き替えしたそうですが、その後、「無名な声優より有名人を使った方が話題になる」という最近でも流行ってる戦略により、この二人で吹き替えしなおしたそうです。

キャラクターに合ってるから、という理由でなく有名人だからという理由がまずあった、という事でしょうか、でも、それで、あの合致率ですよ、しかも、唐沢さん、所さん両方とも、プロの声優さんじゃないのに、あんなにウッディとバズのキャラにピッタリで魅力的で物語を邪魔しない吹き替えができちゃうなんて……

このキャスティングを考えた人は後世に残る大功績をなしとげちゃったんではないでしょうか。最近は”有名人や俳優を吹き替えに使う商法”はほとんどどれも不評を買ってるように思いますが、この作品がある限り、プロの声優さんじゃないとダメ!なんて、ケツの穴のちっちゃい事言う人にドヤ顔できますもんね。

 

2 『モンスターズ・インク

   (2002年日本公開)

   

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   サリー 

   石塚英彦

  (英語版はジョン・グッドマン

   

   マイク 

   田中裕二 

  (〃  ビリー・クリスタル

 

田中さんの騒がしい陽と石塚さんの落ち着いた陰がちょうどいい味に仕上がってます。石塚さんはすごく上手だと思います。

声優さん達は確かに滑舌もよくて声もきれいなんだけど、アニメキャラクターやアニメのヒーローの声をやる事が多いからでしょうか、喋り方が大げさで舞台のセリフを聞いてるみたいに感じちゃうんです。吹き替えを見ると、実際あんなにハイテンションで活舌よく喋ってる人見たことない、って思います。アニメならいいんです。でも、人間だと何とも不自然なんです。

でも、石塚さんは全く自然で、全く大げさでなくて、普段私達が話してるような喋り方です。

洋画を吹き替える時に監督というものがつくらしいのですが、人そのままの自然さが好きな字幕派としては、アニメ以外は石塚さんみたいな普通の抑揚で話すように指導してくれればいいのに…と思います。

 

  

3『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ

  (2003年日本公開~継続中)

 

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ジャック・スパロウ 

平田広明

ジョニー・デップ

 

この作品はジャック船長以外はやっぱ、字幕の方がいいな、と思うんですが、平田さんのジャック船長があまりにも、はまってるので、吹き替えで観たいとよく思います。

平田さん、ジョニー・デップ以上にジャック船長のキャラにはまってると思います。

ジョニー・デップとは声質も全然似てなくて、ジョニー・デップはもっと低くて乾いた声でしゃべるんですが、ひょうひょうとしてて、常にどこかふざけた雰囲気を漂わせてるジャック船長の魅力がこの平田広明さんの高めの声で軽くてちょっとちゃらいしゃべり方のおかげで倍増されてると思います。

平田広明さん(声優、俳優、ナレーター 54歳)、幅広い役ををこなせる名優だと思います。ファンです。このジャック船長から『ONE PIECE』のサンジ、米国ドラマ『ER緊急救命室』のカーター先生まで、ジャック船長とカーター先生なんてキャラが180度くらい違います。ジャックと違って、若くて、真っすぐで青臭くて。で、このカーター先生の吹き替えも元の俳優のノア・ワイリーが話してるのを字幕で見るより、平田さんの吹き替えのカーター先生で見る方がよっぽどカーター先生らしいんです。

『ER』は他の吹き替えもみんな良くて、ドラマじゃなかったら、このBEST5の中に入れたかった程です。

 

4『ダーティハリー』シリーズ 

 (1作目1972年日本公開 5作目1988年日本公開)

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ハリー・キャラハン 

山田康雄

クリント・イーストウッド

 

ドラマ『ローハイド』(1959年~1965年 NET放映)から『パーフェクト・ワールド』(1994年日本公開)まで、クリント・イーストウッド(只今御年87歳)の吹き替えをつとめた山田さん、1995年に亡くなられるまで、他にもアニメの『ルパン三世』のルパンの名吹き替えで、みんなから慕われてますね。

勿論、抑揚の高い舞台のセリフみたいな喋り方はしません。そして粋です。イーストウッドの低い地声とは正反対だし、ハリーの暴力的なキャラや硬質な表情と相反するソフトな声なのに何故かぴったり合います。

ハリーが硬い表情で何か言っても山田さんの柔らかくて粋な喋り方のおかげでハリーがとても人間的に見えるからでしょうか。

粋と言えば、昔はアラン・ドロンの専属吹き替えで一世を風靡した野沢那智さん(2010年没)、他にもアニメで数々のテッパンの吹き替えがある方ですが、近年では、『ダイ・ハード』シリーズでのブルース・ウイルスの吹き替えが絶品と評されてるそうです。

ダイ・ハード』シリーズを吹き替えで観た事がなかったので、急いで、AmazonビデオかTUTAYAで借りようと思いましたが、字幕しかなかったり、別の俳優さんの吹き替えだったりで、観れませんでした。

 

5『ルーム』

 (2016年日本公開)

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ジャック 

菊池慶

(ジェイコブ・トレンブレイ 当時8歳)

WOWOWでこの吹き替えが流れていたので観てみました。

この作品の魅力は5歳のジャック少年役を8歳で演じた天才小役、ジェイコブ・トレンブレイ君の、自然な可愛さに尽きると思うので、もし、ジャックの吹き替えが駒っしゃくれて、又はかわい子ぶりっ子が鼻に突くようなだと、この作品そのものを好きになれないくらい重要ですが、菊池慶君という子の吹き替え、大丈夫でした。天才小役ジェイコブ君の自然な可愛さを壊してませんでした。他には『ファインディング・ドリー』(2016年日本公開)でニモの声を担当したそうです。

(吹き替えはほとんど見ないので誤解してるかもしれません)子役の吹き替えというと、わざとらしくて、逆に可愛くない事が多いように感じてるため、とにかくジェイコブ君の可愛さを台無しにしなかっただけで、名吹き替えに思えちゃいました。

 

 

あまり、吹き替え作品を見ない為、吹き替え派や両方派の方が見たら、内容の薄い記事になってるかもしれませんが、お許しください。

でも、今まであまり考えた事のなかった吹き替えの良さに気づきました。

役のキャラクターと吹き替えする人の相性がぴったりはまった時、その化学反応によって大きな魅力が生まれ、それが元の字幕作品を超えてしまうほど巨大な愛され力になるんですね。

 

NO.3に続きます。