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『熱帯楽園倶楽部』尊敬してても、いちゃもんはつける

 ポスター画像

 出典:映画.com 

   1994年9月17日公開

   監督:滝田洋二郎

       (当時39歳)

   原案、脚本:一色伸幸

       (当時34歳)

 

※ネタバレあり

 

採点:3(5点満点中)

 

あらすじ 

旅行会社の添乗員・紺野みすずは15人のツアー客を引き連れてバンコクに向かうが、そこで日本人青年・飛田林始と、日本人とタイのハーフでカフェのオーナー・ジョイに出会う。彼らは日本人観光客相手のささやかな詐欺を楽しんでおり、みすずも騙されるが、あまりの見事さとしたたかさに逆に憧れを感じてしまう。ホテルのミスが元で全員のパスポートを失くしてしまい、会社から怒鳴り飛ばされた彼女は、後から発見されたパスポートを手にして飛田林とジョイの仲間入りをすることに。みすずにいいところを見せようと思った飛田林は、ジョイの反対にもかかわらず日本のヤクザに拳銃密売の詐欺を持ちかける。ジョイの助けもあって計画は成功し、まんまと300万円を手に入れた3人は超高級リゾートへ大名旅行を楽しむ。みすずは飛田林の気持ちを知りながらもジョイに惹かれ、ジョイと一夜を共にした。バンコクへ戻ってきた3人を待っていたのは、壊されたジョイのカフェと騙され激怒したヤクザ森と所だった。ジョイは2人を日本に帰らせ単身ヤクザに挑もうとする。だがみすずの発案によるニセ警察署作戦が見事に成功し、彼らはこの難局を乗り切った。しかし、もう昔の3人の共同生活に戻れないと気づいたみすずは、別れを決意し、1人タイを旅立つのだった 

 出典:映画.com

主役3人は、

   紺野みすず 清水美砂…現在は美沙に改名(当時24歳)

   ジョイ   風間杜夫

                         (当時45歳)

   飛田林始  萩原聖人

                          (当時23歳)

です。

そして、この3人に騙される間抜けなヤクザ2人を

   森     白竜

                           (当時42歳)

   所     高木尚三

                             (資料なし)

が、演ってます。

 

これはリアルタイムでは観てないので、配信で初視聴したのですが、

途中まで観て、思ったのは、滝田、一色コンビのコメディにしては、キャスト選択に手抜きしてない?という事です。

ジョイの風間さんは、魅力あります。

タイ人と日本人のハーフゆえに、複雑な環境に育ってます。日本人の母親は、

「ここは暑くていや」という捨てセリフを残して、ジョイを置いて、日本に帰ってしまいました。

多分、そこから、悲喜こもごものいろんな体験をしてきたのだろうと思わせる、優しさとずぶとさと清濁合わせのむような包容力のある”おっさん”を生き生きと演じてます。

ミスキャストじゃない?と感じるのは、みすず演じる清水美砂さん。

このみすずは、元は、真面目で気弱なツアーコンダクターが、タイで、現地人のいいかげんさのせいで、仕事のミスの責任を取らされて、そこで、今まで我儘なツアー客のご機嫌を取るために我慢に我慢を重ねてきた生活に嫌気がさし、やけになって、ジョイと飛田林の詐欺師コンビに仲間入りし、ディズニーランドにいるような刺激を経験して、輝きだす、という設定ですが、清水美砂さんて、24歳なのに、妙に落ち着いてる、というか、元からいろいろ経験あります、みたいなおばさんぽい雰囲気があるので、

真面目すぎる女性が詐欺の片棒を担ぐようになって、人生を謳歌するイケイケヒロインにがらっと変わる、というような変化があまり感じられないのです。

みすずは、仲間入りしてから、どんどん大胆になっていって、危なげな事も、楽しんでやるようになる、という設定で、それがこのコメディの痛快さを表現する大切な部分だと思うので、そこは、この人の変化をダイナミックに見せて欲しかったなぁと思いました。

萩原聖人君の飛田林君は、更に残念で、何の個性もないような、[とんだばやし]という苗字が、一番の個性と言ってもいいような影のうすい若者です。

異常に影の薄い若者というキャラクターにするなら、とことん影が薄くないと映えないと思うのですが、とことんではないので、つまらないです。

更に、日本から来たヤクザ二人も、いつもの滝田、一色コンビ作品恒例の、癖のある脇役じゃなくて、銃を撃った事もない、おぼこなお人よしヤクザという以外に強い個性もなく、あっさりしてましたが、これは、いつもと違って新鮮だと思えば気にはなりません。

ベンガルさんに、ヤクザやらせても、さすがに合わなかっただろうし、螢雪次朗さんはオカマの役じゃないと面白くないし。

その分、タイの人々が演じる脇役の逞しさとぎらぎら油ぎった感じとかが、タイが舞台のお話なんだなと趣があって良かったです。

天才脚本家の一色さんに、こんな失礼な事言っていいのか、と思いながら言いますが、

ヤクザをだましてもうけた大金で、3人がリゾートで大名暮らししてる部分はなくして、調子にのった3人が、次から次へと、詐欺で成功し、自分達に怖い物なんてないんだ、と高揚感、万能感で思いあがった後、ヤクザとの対峙があり、ラストの3人の解散という流れになるほうが、ラストでかわされる

「夏休みは終わったのよ」

っていうセリフが鮮やかになるような気がします。