映画についてのよけいな事 

練りきり作りましょう!

『お受験』うつを克服した人に容赦ないバカの私

 画像1

出典: 映画.com

             フォトギャラリー

1999年7月3日公開

監督:滝田洋二郎(当時43歳)

脚本:一色伸幸(当時39歳) 

あらすじ 

 富樫真澄は、実業団の陸上競技部に所属する長距離ランナー。かつては花形選手だったが、45歳となり既に全盛期を超えていた。妻の利恵はそんな真澄の事は気にも留めず、気になる事と言えば一人娘の真結美のお受験の事ばかり。そんな真澄に子会社への出向話が舞い込む。喜んで出向に応じるが、直後に会社は債務を子会社に押し付け子会社は倒産、真澄は責任を取らされる形でクビになることに。出向話そのものがリストラであったことに気付かされる。その後、父親が無職ではお受験にも合格できないということで、しばらく利恵が働くこととなり、真澄は実業団ランナーとしての原点だった湘南マラソンを最後のレースにしようと決め、専業主夫として家事をこなしながら練習を重ねた。ところが湘南マラソンの日はまさに真結美のお受験当日。それでも真澄はレースに出るのだが…

出典:ウイキペディア 

採点:3点(5点満点中) 

 

主人公

矢沢永吉さん 当時49歳)

(田中裕子さん 当時44歳)

大平奈津美  ちゃん 当時8  歳)   

この3人がとっても、魅力的です。矢沢さんは、本業じゃないのに、及第点の演技してるし、田中裕子さんも今と変わらず、上手いし、そして、この役は、娘が、6歳という設定なので、母親は30代だよね、と思って観てるのですが、ちゃんと30代に見えるのです。撮影時、43か44歳だったわけですが、、皺がぜんぜんなくて、バケモノだわー!と(普通は「美魔女ですね!」と素直にほめるんでしょうが)。

そして、娘役の大平奈津美ちゃん、この作品の成功は、この子のキャスティングにあったんじゃないだろうか?と思う位、魅力的です。

商業映画の準主役なんだから、顔が可愛いのは当たり前です。

一色伸幸さんが作る話だから、その可愛いを凌駕する物がないとダメですが、あります、本当の子どもらしさです。大人にとっては都合の悪いおかしな事も、言ったり、やったりする本当の6歳の女の子を見れます。

6歳の女の子としての親への反抗心もあり、世の中のおかしな事に疑問を持つような利発さもあり、好きな男の子(デブで、ちょっとトロイ子なのですが)を苛めるひねくれ者です。

90年代前半の、滝田、一色コンビのコメディは、声を上げて大笑いするようなタイプの゛動゛な感じでしたが、この作品は、コメディと、銘打っていますが、大笑いさせてはくれないです。

THEハートウォーミング作品というのを狙って作ったような感じです。

一色伸幸さんは、1993年~94年にうつ病にかかったそうです。

その5年後公開のこの作品の脚本に、

その経験からくる人生観が 関係してるかどうかは分からないです。

でも、何か、丸くなっちゃったな、毒はどこへいったんだろうなぁ、と感じました。

 一色伸幸さんの脚本の真骨頂である風刺は たっぷりです。 お受験に関わる人々、とりわけ、お受験 の塾の講師達の片寄った物の見方の描写とか。

お受験に関わるおかしな風潮や世の中の不自然な事にたいする疑問も提示され、批判精神も、健在です。

でも、90年代前半の、このコンビの作品の、世間体を気にしない不真面目さというか、「好きな人だけ、楽しんでくれれば、いいんだ」みたいな牙のような物が抜かれてまったように感じます。

途中で、主人公にとって、家族と同じ重さで大事な湘南マラソンの日と、娘の第一志望の小学校の面接日が重なってしまう事が判明し、面接には、両親揃って出席しないと、それだけで、大きなマイナスイメージになってしまう。

ここで、主人公がどっちに行くかで葛藤する、人間ドラマとして、も盛り上がる流れになるはずでした。

主人公が苦悩しながらも、どっちかを選んだのだったら、私は、爽快だな!と感動したと思いますが、彼は中途半端に、両方取ろうとするのです。

だから、ラストは、中途半端なハッピーエンドです(と私は思う)

むりやり、ハッピーエンドにしたかのようです。

こういう風に感じるのは、牙を抜かれて、角も綺麗に取れてしまったからなのかな?

と、感じてしまいます。

 私は、挫折ばかりの人生のせいで、順風満帆な人や、何でも手に入れた人 にどうしても共感できない、ひねくれ者なので、主人公が何かを失い、何かを得た、という話が好きなんだと思います。  

または、主人公が、数々の苦労を乗り越え、努力した結果、最後に目標が実る、というのが。    

なので、この作品の 主人公なら、子どもの為に自分の一大事を諦めるか、又は妻、子どもに嫌われてもいいから、自分を貫くかのどっちかを選ぶという辛い選択を実行して、もし、マラソンを取っても、そういう主人公を、受験小学校の面接官が、「一本筋が通っていていいですね」と気にいってくれて、面接に合格する、という話なら、この作品好きになれたと思います。

とは言え、リストラされた夫の事を、絶望して、責めたり、嫌ったりせずに、さばさばと、「自分が働きに出る」と、行動して、専業主婦だった時より生き生きしだす妻や、

(でも、やはり現実は厳しく、能力不足で挫折しますが)

塾をサボった娘が、

「先生が言ってた、秘密はいけないのよねぇ」

と、叱られるのを覚悟で告白すると

「秘密が100個になった頃、素敵な大人になってる」

と言う父親など、相変わらず、ま反対の角度からの人間造形を見せてくれるセンスに脱帽です。

又、うつ病を克服して、製作現場に戻ってこれて、精力的に執筆された事、本当に立派だと思います。

2009年の救命病棟24時(フジTV)の、何作かの脚本執筆されたと、ウイキに書いてありました。

コメディ色ゼロのあのドラマをどういう風に書いたのか、見てみたいですが、

2013年に、NHKで放映された『ラジオ』を観ようと、DVDを買ったので、まずは、それを真面目に鑑賞しようと思います。