映画についてのよけいな事 

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Netflixが蘇らせたポン・ジュノ節(1)

動画配信サービス Netflixの今夏イチ押しの2作品、『ヒットマンボディガード』と『オクジャ』を観ました。

前者は8/17に公開されるや、米国Box Officeで興収成績が3週連続トップ1だった最新ヒット作で、「キングスマン:ゴールデンサークル』(2018年1月日本公開予定)や『アトミック・ブロンド』(10月公開予定)もこうだったらなーと思いながら楽しみました。 

『オクジャ』は劇場公開されないのがもったいないような名作だったので、少し熱く語りたいと思います。

 何故、日本では劇場公開されないかというと、Netflixでネット配信されるからで、逆に『ヒットマンズボディーガード』は米国ではネット配信されてません。劇場公開と同時にネット配信を始めるというNetflixの主義が劇場興行主達を怒らせ、フランスで、そして韓国国内でさえ、映画館の98%に上映を拒否されています。

 

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        ポン・ジュノ監督(48歳)

 

 ポン・ジュノといえば、人間を面白おかしく、時に哀しく描く名監督ですよね

殺人の追憶』(2004年日本公開)も『グエムル』(2006年日本公開)も『母なる証明』(2009年日本公開)も "生身の人間” を描いていて、観終った後、暫く余韻に浸らされる、浸らせてくれる人です。でも、欧米のキャストで英語版で作った『スノーピアサー』(2014年日本公開)は大作感はあるものの、個人的には、ハリウッドが作るごろごろあるアクション映画の一つ程度の印象しかありませんでした。

社会風刺はたっぷりだし、分かりやすくて面白いんだけど……何だろう、彼独特の上手な"毒"がないのだ。そう、この人の作品の面白さ、"毒"、そして観終わった後考え込んでしまうメッセージ性。それが戻ってきました。Netflixがジュノ監督に60億渡し、「100%自由に作っていいよ」と言われて作った『オクジャ』です。

「内容も編集にも一切口出ししない」と言われたそうです。風刺や皮肉精神たっぷりの監督にとってこんな幸せな環境ないですよね。

この作品中の重要なシーン、豚のとさつ場面を撮る、と言ったら米国内の幾つかのスタジオで断られたそうです。残酷なシーンを見た観客に食肉業界のマイナスのイメージが広がるのを恐れて、食肉業界が圧力をかけたか、スタジオ側が食肉業界に対し"忖度”したか……それでなくてもこの作品の中のミランドという米国の企業は遺伝子組み換え農作物種子を大量に売り、大儲けしているグローバル企業、モンサントを皮肉ってるともとれるのだから。

でもそんな逆風があっても内容に一切口出しされないのですから、生き生きつくれちゃいますよね。※プランBエンターテインメントが制作に関わってるのもそれを後押ししてるのでしょうね。

ブラッド・ピットが代表を務める映画制作会社。  

 成績より作品の質や作家性を重視する。 

 

『オクジャ』のあらすじと感想は(2)に続きます。