映画についてのよけいな事 

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Netflixが蘇らせたポン・ジュノ節 (2)

 ※この記事は『オクジャ』のネタばれを含みます。

 

 

 

 

『オクジャ』のあらすじ

米国の多国籍企業ミランド社の新CEO、ルーシー・ミランドが遺伝子組み換えで生み出したスーパーピッグをチリの農場で見つかった奇跡の豚ということにして、糞も餌も少なく、環境にやさしい、食べて美味しい等いい事ばかりの宣伝文句で紹介し、世界各地の26の養豚家(又は農家?)にその子ブタを託し、育てさせ、十年後、その中で一番大きく美しいスーパーピッグをニューヨークのステージでお披露目するというコンペの企画を発表した。

韓国の山奥で祖父がその一匹の雌豚、オクジャを育てるのと同時に育ち、友達又は姉妹同然になっていたミジャの元からある日突然、スーパーピッグの中で最も優秀と判断されたオクジャが連れ去られた。ソウルにあるミランド社の支店、ゆくゆくは米国のミランダ社の地下研究所 に運ばれるのを阻止し、オクジャを自分の元に取り戻すため、少女の果敢な冒険の旅が始まる。

ソウルでミランド社の輸送車からオクジャを逃そうと奮闘してるときに、ALF(Animal Liberation Front-実際に存在する動物の権利を提唱する過激派組織)のメンバー5人が現れ、オクジャを逃がすのを手伝ってくれるが、彼らもまた自分達の目的を遂げるためにオクジャを利用しようとしてるのだった。

というような序盤からミジャ、オクジャ、ALFメンバー、動物学者、ルーシーやミランド社経営陣らが入り混じって、ニューヨークの町や食肉工場で風刺と、アクション、そして人間ドラマが(豚の哀しい親子愛も)展開します。 

 

 感想

何が面白いかって、ミジャとオクジャ以外の登場人物がみんな一筋縄ではいかない人達ばかり……ティルダ・スイントン(56歳)演じるルーシーは業績と利益が最優先な資本主義の権化みたいになってるし、(この人、金持ちの腐った豚をやらせたら右に出るものはいないんじゃ、と思う。『スノーピアサー』に続いて、憎らしい特権階級がほんとに板についてます。社会風刺が好きなジュノ監督にとってなくてはならない女優さんなんでしょう)

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楽しませつつ、ちゃんと一本筋が通っていて、考えさせられる作品ですが、作品のメッセージ性が押しつけがましくないのは、役者さんたちがジュノ監督のティストを最大限に生かせる、どこか滑稽な味が出せる人達ばかりだから、だと思います。

その滑稽さの主役を担ってるのが、ジェイク・ギレンホール(36歳)が怪演してる動物学者 ウイルコックス博士です。

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そしてジュノ監督のオシャレな皮肉のパートを担当してるのが、ALFです。

「 暴力は嫌い」「誰も傷つけない」がモットーのALFと自慢するくせに、ALFの規則を破ったメンバーにリーダーのジェイが殴る蹴るの制裁をするところや、暴力を全否定していても目出し帽をかぶり、企業の商品を強奪して逃げるところなんが犯罪者集団にしか見えないし。

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もう、とにかく人間が人間臭くて、それだけでも私は大好物なんですが、それだけでない骨太の作品です。映画を見て、学ぶ、考える、という事ができる、心の栄養になる作品です。

   クレジットの後の映像もユーモアたっぷりでバカ笑いしてしまいました

 

 

※ 個人的に最高だったこと  

  ALFのリーダー、ジェイ役のポール・ダノ(33歳)

  男らしさやセクシーさを強調したがるハリウッドアクターの中で真逆の道を行く人

 

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このオスの匂いが全くしない中性さ

 この人がALFのリーダーをやってるんだが、動物を虐待や不当な扱いから助ける団体のリーダーというのが、イメージにピッタリで、この役で観れるだけで眼福でした。

    

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