スピルバーグはオワコンなのか?
私はスティーブン・スピルバーグ監督の作品が大好きでした。面白いとか感動するというのは脚本家の手腕もあるでしょうが、彼の作品のすべてに共通して感じる人間臭さがどストライクなのです。”カラーパープル”や“アミスタッド”を作るような、人権や平等さに敏感な所も尊敬してます。特に”ジュラシックパーク”は彼がこのシリーズで一貫して表明している”人間は自然に勝てない”という哲学的なメッセージと遊園地で遊んでいるような面白さ、怖さの融合のうまさを感じる度に、”ジュラシックワールド”のご都合主義の多さを感じる度に、スピルバーグの他に追随を許さない演出家としての才能に感嘆する作品です。
ところが、最近、彼の作品を見たいと思わないのです。世間でも、「彼はもうオワコン」というささやきが聞こえてきたりします。そこで最近の三作品、”リンカーン” ”ビックフレンドリージャイアント” ”ブリッジオブスパイ”を見てみました
リンカーン
感想
正直、アクター界の世界遺産、ダニエル・デイ・ルイスの憑依演技がなかったら、リンカーンの生国アメリカ以外では話題にならなかったのでは?
ビック・フレンドリー・ジャイアント
良かったところ
B・F・J(ビックフレンドリージャイアント)の人懐こくて表情豊かな顔、そして声(名優マーク・ライアンス!)
悪かったところ
ファンタジー映画として楽しませてくれる壺をしっかり押さえている所は健在だけど、「あー面白かったー!! 見てよかった!」と思う程ではなく。
ブリッジ・オブ・スパイ
ソ連、東ドイツと冷戦下のアメリカの、それまで熱心な人権擁護派でも何でもなかった弁護士が、ある日突然、裁判にかけられるソ連のスパイの弁護に指名された事から、そのスパイ、さらに危機にひんした二人のアメリカ人の命を救う国家的ヒーローになる、みたいな話。
良かったところ
セリフもスリルとユーモアとの塩梅も最高。
悪かった所
主人公が圧倒的な抑圧に逆らって一生懸命スパイを弁護する理由、命の危険を冒してまでソ連のスパイ、米国パイロット、米国の学生を助ける動機に説得力がなくて、どうしてそこまでやるのか共感できなかった。弁護士としての職業倫理?警察官や消防士の自己犠牲は日本人の涙を誘うが、日本人のおばさんには死を覚悟しても引き受けるほどの職業倫理が弁護士にあるとはどうしても思えない。
スピルバーグお気に入りのトム・ハンクスが醜い中年太りの姿で主役をやってても魅力を感じない。
で、結局オワコンだと感じたの?
自分の好きな俳優ばかり使うっていうのは、どうも、下り坂の人の癖だと思う。今よりももっとオワコンになってしまいそうな作品が控えているし。そう、御年75歳のハリソン・フォードのやる”インディ・ジョーンズ5作目”。失敗臭がぷんぷん匂ってくるのは私だけでしょうか?
私は一番最初にファンになった海外スターはハリソン・フォードなので、好意的に見たい。でも、年輪を重ねて生まれ変わったような魅力を放つおじさん達がたくさんいる中この人はまだ上手に枯れてない。30代のハリソンがただ顔にしわが一杯になっただけな感じ。そのハリソンがアクション山盛りのインディ・ジョーンズに?走れないでしょ、ジャンプできないでしょ、CGでアクションシーン作るの?それとも老人のインディがハアハア息きらしながら走って笑わせるコメディにするの?誰しもが私と同じ疑問を抱いてると思う。製作発表した後、なかなか撮影開始にならないのは、作る本人達でさえ内容を考えるのに困っているから?ともあれ、この年のハリソンにインディをやらせるスピルバーグはよっぽど凄い秘策を持っているのか、又は年老いて判断力が鈍った裸の王様なのか……2018年公開予定の”Ready Player One"と2020年(先送りになったんですね)公開の”インディ・ジョーンズ 5”はシリアス路線じゃないから、今度こそ、オワコンかそうじゃないのかはっきりしちゃいそうです。
独断と好き嫌いにみちた意見を最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。